類義語展開と翻訳をまとめて行えるPATENTSCOPE
特許調査の基本はFIやFタームを特定して特許分類検索を行うことだと思いますが、「キーワード検索」を併用することも必要であると思います。
「キーワード検索」を実施する際に大切なのが、「いかに指定するキーワードの類義語を展開できるか」ということです。具体的には、検索に用いる概念を表すキーワードが、予備検索で把握された関連公報の中で異なる表現がされているのを拾い上げたり、自分の頭で思い浮かべられる類義語を書き出したり、過去に使った類義語展開を引っ張り出してきて再利用するといったことが行われていると思います。
今回は、WIPO(世界知的所有権機関)から提供されている「PATENTSCOPE」の中に、類義語展開の参考になるとともに、さらに、多言語へ翻訳までしてくれる機能を見かけましたので紹介します。
■PATENTSCOPE
https://www.wipo.int/patentscope/en/
■PATENTSCOPEの「多言語検索拡張 (CLIR)」のページ
https://patentscope2.wipo.int/search/ja/clir/clir.jsf
検索メニューをプルダウンして「多言語検索拡張[CLIR]」を選択した時に、デフォルトで表示される画面の検索用語の欄に「電気自動車」と入力し、そのまま検索ボタンをクリックすると以下の検索式が自動作成されます。
【作成された検索式】
JA_AB:(“電気自動車” OR “電動車両”) OR EN_AB:(“electric vehicle” OR “electric automobile” OR “electric car” OR “motor driven vehicle” OR “electrically driven vehicle” OR “electric motor vehicle”) OR FR_AB:(“véhicule électrique”) OR DE_AB:(“Elektrofahrzeug” OR “elektrisches Fahrzeug”) OR ES_AB:(“vehículo eléctrico”) OR PT_AB:(“veículo eléctrico” OR “veìculo acionado” OR “veículo elétrico associado” OR “veìculo elétrico”) OR RU_AB:(“электромобиля” OR “электрическое транспортное средство и” OR “электротранспорта” OR “электрическим подвижным составом” OR “и электрическое транспортное средство” OR “транспортного средства с электрическим”) OR ZH_AB:(“电动车”) OR KO_AB:(“전기차량의” OR “전기 자동차의” OR “전기 차량용” OR “전동 차량” OR “전기 자동차용” OR “전동차용” OR “이용한 전기자동차용” OR “이용한 전기자동차의” OR “전기차”) OR IT_AB:(“veicolo elettrico” OR “dispositivo elettrico”) OR SV_AB:(“elfordon” OR “elektriskt fordon” OR “laddningskrets”) OR NL_AB:(“elektrische voertuig”) OR PL_AB:(“elektryczną pojazdu” OR “pojazd elektryczny” OR “zwłaszcza pojazdu elektrycznego”) OR DA_AB:(“elektrisk køretøj” OR “elektrisk forsynes” OR “elektrisk fartøj”)
この式を読み解くと、電気自動車の日本語の類義語として「電動車両」というキーワードが展開されたことが伺えます。
さらに、日本語に加えて、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、中国語、韓国語、イタリア語、スウェーデン語、オランダ語、ポーランド語、デンマーク語に翻訳されたキーワードが指定されています。
このように、PATENTSCOPEの「多言語検索拡張[CLIR]」を利用すれば、日本語の類義語を確認するとともに、翻訳された多言語についても一緒に確認することが可能です。
さらに、「拡張モード(手動)」を選択した場合の表示画面についても説明します。
「拡張モード(手動)」のラジオボタンを押すと検索対象とする技術分野の候補が提示されます。提示された技術分野から検索対象とする技術分野を選択すると、次の図のように、日本語の類義語候補が提示されます。表示された類義語群から検索に用いるキーワードのチェックボックスを選択することができます。また、「類義語を追加」ボタンをクリックして、類義語候補に提示されなかった「EV」といった既に把握している類義語を追加することも可能です。(EVを追加指定すると、部分一致検索されることにより不要なノイズが増加する可能性があることもご理解ください。)
そして、「選択した類義語を翻訳する」のアイコンをクリックすると、多言語に翻訳されたキーワードが表示されます。最初は「日本語」の表示画面が表示されますが、表示させたい言語タイトルをクリックすると各国語のキーワード表示に切り替えることができます。次の図は「日本語」の表示画面を提示しました。その次の図では「英語」の表示画面を提示しています。
このように、「拡張モード(手動)」を使うことで、日本語の類義語展開を詳細に確認できるとともに、翻訳については必要な言語のみに翻訳されたキーワードを確認することが可能です。
自然言語処理と機械翻訳の技術が発展した恩恵として、無料で活用できるツールや機能がいろいろと出てきていると思います。このような便利なツールを上手く使いながら効率的な特許検索を実施したいですね。
-以上-