その4 特許分類とキーワードを掛け合わせて調べる

独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)より、無料で特許情報の検索ができる「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」が提供されています。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

1999年から「特許電子図書館(IPDL)」として始まった無料の特許データベースは、2015年には「J-PlatPat」として生まれ変わり、さらに、2019年5月には、大きく機能改善がなされて検索操作のインタフェースも大きく変更されました。

この講座では、特許調査の初歩の段階で行われる簡単な特許検索について、無料で手軽に使える「J-PlatPat」の実際の操作事例を紹介しながら解説していきます。

 

4.特許分類とキーワードを掛け合わせて調べる

特許調査の基本はFIやFタームを特定して特許分類検索を行うことですが、前項のダブルクリップの検索例(図23、図24)のように、特許分類指定のみではヒット件数が膨大になってしまうことが多いです。その場合には特許分類にキーワードを掛け合わせて絞り込み検索を実施することになります。

次は、「J-PlatPat」での、特許分類×キーワードの検索例を紹介します。

 

(1)特許分類にキーワードを掛け合わせて検索を実施する

例えば、調査したいダブルクリップの内容が、「レバー部の構造や機能に特徴を有するもの」であるケースを想定してみます。ダブルクリップの特許分類の中に、「レバー部に特徴を有するダブルクリップ」という細分類があれば、その特許分類を指定するのみで良いのですが、そのような細分類が存在しなければ、ダブルクリップの特許分類にレバーのキーワードを掛け合わせて検索を実施することになります。

図25は、ダブルクリップのFIである「B42F1/02@B」に対して、要約/抄録中に「レバー」のキーワードを含むものを掛け合わせて絞り込み検索を行った画面になります。

図25 FI AND キーワードの検索画面

1行目の検索項目は「FI」を選択し、入力欄には「B42F1/02@B」と入力しています。さらに、2行目の検索項目は「要約/抄録」を選択し、入力欄には「レバー」と入力してから検索ボタンをクリックします。そうすると、検索結果表示の画面のように、国内文献のヒット件数とともにヒットした特許の目次一覧が表示されます。

FI指定のみでは1000件以上の特許がヒットしましたが、「レバー」のキーワードを掛け合わせることで「55件」にまでヒット件数を絞り込むことができました。このくらいの件数まで絞り込めれば、スクリーニングしやすい件数に近づいたと思われます。

 

(2)指定するキーワードの注意点

掛け合わせるキーワードを指定する際に注意すべきことが「類義語の展開をする」ということです。ここでは、「レバー部の構造や機能に特徴を有するダブルクリップ」を検索する事例に基づいて説明します。

図26では、レバー部の構造や機能に特徴を有するダブルクリップに関する3件の特許、実用新案について、「ダブルクリップのFI×レバー」の検索において、ヒットしているのか、していないのかについて比較しました。

 

図26 指定するキーワードによるヒットの有無

3件のうち、対比表の左側と真ん中の公報はヒットしたのですが、右側の実開平06-049069はヒットしていません。3件ともに、ダブルクリップのFIである「B42F1/02@B」は付与されていたのですが、右側の実開平06-049069では「レバー」というキーワードは使用されていなかったのです。「レバー」という表現ではなく、「つまみ部」というキーワードが用いられていたのです。

つまり、キーワードを指定する際には、「レバー」に相当する異なるキーワードで表現された類義語(同義語、広義語、上位語、狭義語、下位語、関連語、連想語、反義語など)を並列で指定しないと検索モレが発生してしまうのです。レバーの場合、「レバー つまみ 取っ手 ハンドル」のように類義語を展開すれば検索モレのリスクは低減されます。

一方で、対比表の真ん中の登録実用3117841の公報を見てみると、「ダブルクリップ」というキーワードは使われず、「バインダークリップ」というキーワードで表現されています。しかし、ダブルクリップというキーワードは使われていなくても、ダブルクリップのFIである「B42F1/02@B」は付与されているので、「ダブルクリップのFI×レバー」の検索であってもヒットしていたのです。

この事例を振り返ると、特許分類を用いることにより、網羅性が高まり検索モレが少なくなることが理解できると思います。特許調査の基本はFIやFタームを特定して特許分類検索を行うことであるといわれる理由がここにあります。

 

(3)キーワード検索と分類検索のメリット、デメリット

ではここで、キーワード検索と特許分類検索のメリットとデメリットについて確認しておきましょう。図27ではそれを表にまとめました。

図27 キーワード検索と特許分類検索の比較

キーワード検索は、Google検索でググるように、思い浮かんだキーワードをそのまま直接的に入力して検索が行えるので、わかりやすいのですが、同義語や類義語を展開しないとモレが発生してしまいます。それに対して、特許分類検索は、網羅的でモレやノイズが少ない検索ができる反面、分類体系に関する知識が要求され、選定に際しても慣れが必要になります。また、特許分類は技術分類であり、技術の進化変遷にあわせて新設や改廃が行われるため、最新技術に対して分類体系が構築されていないことになり、最新技術を検索する際にはキーワード検索に頼らざるを得ないことになります。

以上のようなキーワード検索と分類検索の特性を踏まえて、特許調査の場面においては、キーワード検索は予備検索の段階で活用され、予備検索により特定された特許分類を活用して、特許分類検索もしくは特許分類×キーワードの検索を本検索として実施していくことになります。

今回の特許検索講座の解説は以上です。次回は「その5 検索式の考え方と特許調査の基本手順」について解説していきます。