その1 番号から調べる

独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)より、無料で特許情報の 検索ができる「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」が提供されています。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

1999年から「特許電子図書館(IPDL)」として始まった無料の特許データベースは、2015年には「J-PlatPat」として生まれ変わり、さらに、2019 年5月には、大きく機能改善がなされて検索操作のインタフェースも大きく変更されました。

この講座では、特許調査の初歩について、実際に直面する特許調査事例とともに解説していきます。

 

1.番号から調べる

ものづくり企業において、新しい商品を開発したり改良したりする際に、すでに市場に存在する他社の商品を見たり触ったりして、新たなアイデアを着想することは日常的に行われていると思います。面白そうな商品を見つけたときに、パッケージやカタログを見てみると、「特許第〇〇〇〇〇〇〇号」とか、「特許出願中 特願△△△△-△△△△△△」のように、特許を取得した、もしくは、特許を出願しているということをアピールした表示を見かけることが多々あると思います。

このように、特許について手当されている商品のことが気になるのであれば、手当されている特許の内容を確認したくなるのは当然のことかと思います。

特許に関する番号が表示されており、その番号から特許を特定できれば間違いありません。まずは、特許に関する番号から、その特許の内容を調べる実際の検索事例を紹介します。

(1)特許第5933091を調べる

図1には、番号から調べる仮想事例の一つ目を紹介しています。この事例1は、アイデア商品を販売しているお店で「ペン立て機能を有するWクリップ」を見つけ、さらに、横に置いてあったカタログを見ていると、「特許第5933091号」と記載されており、特許の内容が気になったという仮想事例です。

図1 特許番号から調べる事例

特許に関する番号と言っても、いろいろな種類の番号が存在します。特許公報の種類や番号の種類については後ほど解説しますが、とりあえずはJ-PlatPatにアクセスして最初に表示される「簡易検索」の入力欄に調べたい番号をそのまま入れて検索することが可能です。

図2 特許第5933091号の検索画面

図2は、最初に表示される簡易検索の入力画面と、検索結果のリスト表示画面になります。「5933091」は、特許番号(登録番号)に相当しますが、番号の種類を気にすることなく、7桁の番号を入力して検索すれば、対応する特許をヒットさせることができます。

そして、検索結果表示の登録番号の欄の「5933091」の番号のリンクをクリックすると、図3に示したように、特許の内容を確認することができます。

図3 特許第5933091号の内容表示画面

内容を確認すると、開閉レバーの部分に筆記具を保持するための筒状の保持部を有するダブルクリップであることがわかります。

(2)特許に関する各種の番号

特許に関する番号がわかれば、その特許を確実に特定することができますが、特許の番号については、いろいろな種類の番号があるので整理してみます。

1件の特許出願についてもいろいろな番号が存在します。特許出願が行われると「出願番号」が付与されます。そして、その特許出願が一般に公にされる際には公報として発行されるので「公報の番号」が付きます。特許に関する公報については様々な種類の公報が存在するので、公報の種類と公報番号については、次に表1に基づいて解説します。

さらに、審査が完了して登録されると「登録番号」が付きますし、その後に、異議申し立てや無効審判が行われると、「異議申立番号」や「審判番号」が付けられます。
このように、1件の特許出願にはいろいろな種類の番号が付けられるのです。

そして少しややこしいのが、各種公報とその番号です。特許と実用新案に関する公報の種類を表1にまとめました。

表1 特許、実用新案に関連する公報の種類
公開系 登録系
特許 公開特許公報 公告特許公報
公表特許公報 特許公報
再公表特許
実用新案 公開実用新案公報 公告実用新案公報
公表実用新案公報 実用新案登録公報
登録実用新案公報

 

特許と実用新案に関連する公報として、まず大きくは「公開系」と「登録系」の二つに大別されます。

「公開系」は出願された特許について、審査の有無にかかわらず、出願から1年半を経過すると公開される公報です。公開ではなく「公表」公報は海外で出願された国際特許出願が日本国内に移行して公開されるときに「公表」公報として公開されます。「再公表」は日本で国際出願された国際特許出願が日本で公表される場合に「再公表」公報として発行されます。

一方、「登録系」は出願された特許の審査が完了し、最終的に権利として認められた特許の内容を公にする際に発行される公報です。平成8年までは審査終了後の公報は「公告公報」として発行されていましたが、現在では審査終了後の公報は「特許公報(登録公報)」として発行されています。特許調査は過去に蓄積された公報を対象に調査を行うことになりますので、特許調査を実施すると公告公報を取り扱うことも起こりえます。実用新案については平成6年以降に出願されたものは無審査で公報が発行されるようになったので、「登録実用新案公報」は「公開系」公報として位置づけられています。

このように、特許と実用新案のそれぞれの出願の年代と種類に応じて、公開相当の公開系公報の番号と、審査済み登録相当の登録系公報の番号とが存在します。

特願2018-037031を調べる

図4には、番号から調べる二つ目の仮想事例を紹介しています。この事例2は、大手文房具メーカーのプレスリリースでダブルクリップの新商品が紹介されており、特許出願していることをアピールするために、特許の出願番号である「特願2018-037031」が記載されていたという仮想事例です。

図4 出願番号から調べる事例

先の事例1ではJ-PlatPatで最初に表示されるの「簡易検索」を用いましたが、この事例2では、番号の種類ごとに詳細に検索を行える「特許・実用新案番号照会/OPD」の検索メニューを利用したいと思います。

図5 特願2018-037031の検索画面

図5は、トップページの「特許・実用新案」のバー表示にマウスを合わせるとプルダウン表示される「特許・実用新案番号照会/OPD」のメニューと、それを選択すると表示される番号入力画面になります。「番号種別」の項目で「特許出願番号」を選択し、「番号」の欄に「2018-037031」と入力した画面になります。

そして、「照会」のボタンアイコンをクリックすると、図6の検索結果表示画面が表示され、さらに、公開番号の欄の「特開2019-018551」の番号のリンクをクリックすると、図6右側の文献表示画面が表示され、特許の内容を確認することができます。

内容を確認すると、開閉操作時のレバーの支点位置を移動させることで、開閉操作時に必要な力を低減させるダブルクリップであることがわかります。

 

図6 特願2018-037031の内容表示画面

調べたい特許が存在するときに、その特許に関する番号の情報があれば、その特許を確実に間違いなく特定することができます。特許調査を実施する際には、まずは、その調査テーマに関連する特許の番号に関する情報の有無を確認し、番号があれば、その番号をキーとした検索を行うことで、その後の特許調査に役立つ情報が得られると思います。

今回の特許検索講座の解説は以上です。次回は「その2 キーワードから調べる」について解説していきます。

以上